あれこれ雑談を交わしているうちに年齢の話になった。
この際、確認しておこうと年齢早見表を見る。
こんど誕生日を迎えれば喜寿。
祝は「満」でする人もあれば、「数え」でする人もあるなどと話は弾んだ。

夜、床についてから寝つかれぬまま、昼間のことに関連して、いろいろなことが思い出された。
いまの自分は、おかげさまで一応健康に恵まれ、人からの頼みに応じて話しもする。
わが人生で今が一番良いときである。
ありがたいことである。

もう、だいぶ昔になる。
昭和12、3年のころ、よく「あみだくじ」をした。
残業の時間に誰かが言い出して始める。
紙に「あみだくじ」に加わる人の数の平行線を縦に引き、線の下端に「お使い」、10銭、20銭と「当たり」の役割と金額を書く。
金額などを記した部分を折り曲げて隠す。

それぞれの人は平行線の上端に自分の名前を書き、隣り合う平行線を横に引いた線でつなぐ。
つなぐ線の数と位置は書き込む人の思いのままでよい。
くじびきは名前を書き込んだ先端をスタートして線をたどる。
つないだ線に出会ったら、その線をたどり、隣の平行線に乗り移る。

やがて平行線の下端に書き込んだ「当たり」に到達する。
高額な金額の当たりが決まれば、ご当人の気持ちには関わりなく、ほかの人は歓声をあげ、お使いが当たった人はやれやれという顔をする。

今では、この金額がどの程度のものか知る人は少なくなった。
当時の日給は1円50銭ぐらいだった。
そばの「もり」は7銭、銭湯は大人5銭。

「あみだくじ」は良い結果が得られるように、また、得させようとして、つなぎの線を加えても、次につなぎの線を加える人が、その思わくとは違って書き込めば、その思いは外れてしまう。
当たりを隠さなかったら、読みの素早い人なら見破ることはできよう。
しかし、それは最後に書き込む人だけにしか許されない。
みんなは、そんな難しいことは考えない。
そのときどきの思いつきでつなぎの線を書きこむ。

人が生まれて初めて歩き出す道は、すでに決まっている。
生まれるものが道を選ぶことはできない。
これは誰も同じである。

その後も百人百様の道を歩く。
両親を同じくする兄弟姉妹でも同じ道を歩かない。
それぞれの個性が違い、取り巻く環境も違う。

子育ては、両親の年齢によって厳しさが違う。
若いときの子供は暮らし向きもそんなに楽なはずもなく、厳しく育てられる。
親は年を重ねるとともに、何事も自分の思い通りにならぬものと思うことが多くなり、厳しさもだんだん和らぐ。

兄弟の多少も影響がある。
多ければ中の子供は競う心が強く逞しく育つ。
総領はおっとり育ち、末っ子は甘く育つ。

まして成人して、世間に出れば、その時代の影響はもとより、職場、接触する人からの影響を受ける。
人によって、この道を歩もうと決意して、目標を達したひともあろう。

しかし、都会での大部分の人の暮らしは、いわゆる、サラリーマンである。
人手が余っているという当今では、不本意な就職先でも満足しなければなるまい。
つい先ごろまでの人手不足のときならば、個人の好みによって就職先を選べたであろうが、入社したら、社長でない限り、常に上司の存在がある。
その職にある限り上司を選ぶことはできない。

自分で道を選んで歩もうと思ってもままならない。
しかして、ほとんどの人は、そのとき、そのときに歩む道を望みながら、あるときには思いを達し、あるときは止むを得ず与えられた道を歩むことになる。

人の歩む道は「あみだくじ」のように、その人をとり巻く人々が結んだ線によって決まっていく。
自分がいくら力んでも、自分をとり巻く人の数は断然多い。
自分の思いは自分がつなぐ線を引くときだけだから、ほんのわずかしか思い通りにならない。

人生はまさに「あみだくじ」である。
さて、自分の歩いた道はどうだっただろか。

どこの会社も、年に1度か2度、職制の変更が行われ人事異動があるのが常である。
業務の遂行にふさわしい職制と適任者を配置するためである。
自分も所属が変わり、上司が変わったこともある。
その度ごとに、当然、仕事の内容も変わった。
行う仕事が変わるということは、自分の歩む道が変わるということである。

新しい職制を計画した人は、自分の「人生のあみだくじ」でつなぎの線を入れたのである。
しかし、結果として仕事の内容は変わったが、設計とまったく縁のない部門に所属したのは、昭和20年の前後1、2年で、常に設計に関連していた。
定年を過ぎてもはや15年を過ぎたが、今もその延長線上にある。

企業での仕事はすべて上司の指示によって行う。
個人が勝手に行うことはない。
任された部分があっても、方針を決めたら報告をして、承認を得てから実行に移す。
自分の考えを生かすのは、指示された仕事の出来栄えを良くすることだけしかない。
すなわち、良い仕事をすることである。

良い仕事をしようとすれば、今の仕事の仕方を吟味することになる。
まずいと気がつけば、ほおっておくことはできない。
上司に改善案を提案する。
承認が得られれば実行に移すことができる。
改善案が採用されたのである。
仕事をする者にとって、こんな楽しいことはない。
自分の考えを注げる領域が広ければ広いほど仕事は楽しいものだ。

仕事の目的に対し、最も良い仕事の仕方を考え、ルールにまとめ、実行に移すために行動をする。
普通、これを標準化というのだろう。
仕事の種類はこの世の中に数多くある。
仕事でも楽しむには、よりよい仕事の仕方を求めながら行えばよい。

思えば、入社して4年目、「新しい標準化の進め方」を提唱した主任の下で、グラブバケットの標準化に始まり、「標準化」に関係する仕事に携わってから半世紀をすぎた。
初めは何も分からぬまま、仕事をしたけれど、必要に迫られれば、調べものもするし、人にも、教えを仰ぐ。
18歳のろくに仕事のできない少年が定年を迎えるころは、それなりに、人に語れるものをもつ。

それらのすべては上司をはじめ、自分の仕事を助けてくれた良き部下、そのほか、その企業に働くすべての人から直接間接に教えられたことも大いに役立っている。

よくよく考えれば、わが「人生のあみだくじ」で自分の意思で行動したのは、その時々の仕事に当たってよりよい仕事の仕方を求め続けてきただけである。
自分の今はすべて、自分の歩む道を、そんな遠い先まで見通してつなぎの線を加えて下さったのではなかろうけれど、右に左に決めて下さった結果にほかならない。

決めて下さった方々はみんな「あみださま」である。
ただただ、厚く感謝するばかりである。

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えりえぽん
eriepon(えりえぽん)といいます! 1973年東京都で生まれその後すぐに、父の仕事の都合で茨城県へ~成人するまで茨城で育ちました! 現在は埼玉県在住です。 郊外の一戸建てに旦那様と娘一人、猫2匹と暮らしています。 好きなもの【猫、オートバイ、ラーメン、カフェ、アウトドア】 子猫の育て方、美味しいお店の情報、ツーリング情報、生活情報など色々な話題を綴っています! レビューや食レポのご依頼はお問い合わせフォームよりお願いいたします。